婦人科領域において、鍼灸の効果を検証するのは容易いことではありません。が、基礎研究として有効なものに「中髎穴施鍼」と「陰部神経施鍼」があります。その施鍼法の研究と開発を行った、名古屋市の明生鍼灸院での治療法を、ネットワーク会員にはあまねく伝搬されています。

1、中髎穴施鍼
第三仙骨孔から情報へ刺入し、患者が響きを得るように一定の振動を加えます。
この施鍼法により、子宮動脈の抵抗値が低下しました。動脈の抵抗値が低下するというのは、簡単にいえば固くなった動脈が柔らかくなり、血の巡りが良くなるという事です。換言、子宮への血流量が増加することにつながります。それによって子宮内膜厚の改善が期待できます。

2,陰部神経施鍼
陰部神経叢へは、上後腸骨棘と坐骨結節の中点の奥深いところで刺激を行います。そこへ長い鍼を刺入し、患者が強めの響きを得るように刺入します。この施鍼法を行うと、採卵数が増加する傾向にあります。体外受精における採卵は、様々な排卵誘発の方法がありますが、同じ排卵誘発という条件下でこの治療法を行った場合と行わなかった場合で比較検討されています。

3,下腿と腹壁の施鍼及びパルス刺激
ラットを使った実験で、ラットの下腿及び腹部に鍼を刺入し、一定の周波数と強さで電気パルスを流すと、血圧はほとんど変動しないのに、卵巣血流量のみが上昇する事がわかりました。これは体制ー自律神経反射を利用した手技です。この実験結果から、刺激方法のバリエーションが生まれる可能性があります。どういった部位にどのような刺激を加えることがもっとも卵巣血流量を増すか、採卵成績などで検証を行っています。

4,レーザー(または直線偏光)照射(Low Level Laser Therapy・LLLT)と鍼灸の融合
一部の、しかし今や沢山の生殖医療施設でも導入されいている低出力レーザーは、全身的には星状神経節へ、また局所的にも卵巣や子宮付近に照射することで効果を得られるとされていますが、そこに鍼灸を追加することにより、その効果を増幅すると考えられています。鍼灸院のみならず、低出力レーザーと鍼灸を併用されている医療施設でも同様のデータが出ています。それは交感神経を抑制することにより、毛細血管(やもっと太い血管も)が拡張しやすくなるため、上記の様々な鍼灸の効果が現れやすくなると考えられています。生殖医療施設では、婦人科に限った利用ですが、この方法は応用範囲が広く、多種の領域を扱う鍼灸院では、様々な疾患に利用されています。